新技術の普及による恩恵とは、こういうことか。チタンミニベロ LIGHTCYCLE Ti451 に装着するボトルケージを探す中で、とても感心しました。2010年代に大企業が設備投資してきたCFRTP(炭素繊維強化熱可塑性樹脂)が、自転車のアクセサリーパーツにまで普及してきたのです。
そもそもは LIGHTCYCLE Ti451 に似合うボトルケージを、かなり細かくて面倒な条件で探してました。その条件とは、❶細身・シンプル・スタイリッシュ、❷軽量・高強度・高耐久、❸横抜き可・旧型ポディウムチルも使用可、❹1個2,000円以下、❺素性が知れる国内販売者の取扱製品であること。
これらの条件を満たすボトルケージを探すうちに、京都の自転車店きゅうべえが展開するオリジナルブランド “LIBIQ” の カーボンコンポジット製ボトルケージ デルタ へ辿り着きました。で、謳い文句のカーボンコンポジットとは何ぞや? と思って調べたらCFRTPの1種だったわけです。
CFRTPと従来のカーボンは何が違う?
一般的に認識されてるカーボン製のフレームやパーツは、CFRP(炭素繊維強化熱硬化性樹脂)が使用されます。CFRPを使用する製品は、成形から硬化のプロセスが煩雑(手作業で型にはめてオートクレーブで加圧・加熱して硬化)で端材の再利用もできないため、どうしてもコスト高になります。
一方、CFRTPは加熱溶融・冷却硬化する樹脂を使用するので、射出成形やプレス成形による大量生産が可能。しかもリサイクル材(細切れ炭素繊維を含んだペレット)を使えるので、製品製造コストを大幅に削減できます。また、CFRTP製品は軽量性こそCFRP製品に劣るものの、耐衝撃性に優れてます。
そんなCFRTPは2010年代後半に自動車産業で普及し、ここ1〜2年で自転車アクセサリーパーツにまで波及してきました。ELITEのボトルケージにはインジェクテッド・カーボンという名で、fi’zi:kのサドルやシューズにはカーボン強化ナイロンという名で、いずれもCFRP製より安価な製品の部材として。
CFRTP製ボトルケージ LIBIQ デルタ をレビュー
きゅうべえが販売する LIBIQ カーボンコンポジット製ボトルケージ デルタ も、CFRTPを使用することで低価格(1,306円)を実現。ドリンクボトルを左右どちらからでも、斜め横から抜き差しできます。同じ設計思想の ELITE Cannibal XC より細身で、カラーアクセント皆無のマットブラック仕上げ。
そんな LIBIQ デルタ の本体重量は実測20g。細身で加飾がない分、ELITE Cannibal XC(実測36g)より軽量です。さらに軽さを求めるならCFRP製の TNI LW17Ⅱ が公称15gだけど価格は3倍。ちなみに、デルタ付属のフレーム固定用ボルトは重いので、アルミやチタンの他社製ボルトを推奨します。
LIBIQ デルタ は細身でシンプルなデザインのボトルケージなので、フレームのボリュームが細めな自転車に似合います。我が LIGHTCYCLE Ti451 も金属フレームゆえにエアロカーボンフレームのようなボリュームがなく、いかにもレーシーなボトルケージは似合わんのですよ。
他社製品より微妙に太い CAMELBAK ポディウムチル の旧型も新型も、問題なく LIBIQ デルタ に抜き差しできます。ケージがバネのようにしなってボトルを掴んでるようで、試走した限りではガタツキも発生しませんでした。後は、どのくらいの耐久性を見せてくれるかですな。
ドリンクボトルを挿した状態を斜め後方から見ると、ケージの上下アームがボトルを挟むように掴んでる様子が分かります。ボトルをひねりながら横へ倒すと上アームが少し広がって、ボトルがスポッと抜けます。ボトルを挿すときも、ケージの斜め横からボトルをひねって挿すと簡単。
上から見ると、このくらいの角度で抜いたり挿したりする感じです。慣れると目視せずに抜き差しできるし、無理な力を入れる必要もありません。また、ボトルに傷が付かないか心配したけど、今のところ大丈夫です。ELITE Cannibal XC ほど固くないからでしょうか。
右手でひねりながら抜き差しする場合、シートチューブ側のほうがボトルを抜きやすく感じます。ボトルを逆手に掴んで反時計回りにひねりながら引き起こす動作が、腕にとって自然なアクションなのかも。思ってた以上にストレスフリーで、とても気に入りました。
CFRTPは大量生産に向くだけでなく、耐衝撃性が高いので弾性が求められる部材にも向いてます。そう考えると、ボトルケージに適した素材なのかな。今後、さまざまなCFRTP製の製品や部材が増えていくでしょう。より適材適所が進んで安価な製品が生まれることを、期待せずにはいられません。
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